Photo: Masaaki Inoue(Bouillon)
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自然と家族が集まる場所 400
建築家一家が両親、弟と暮らす沖縄の3世帯住宅。過ごすほどに絆が深まり、幸せが広がっていく。家族とともに成長していく沖縄の家を訪ねました。
- Product
- 乾太くん
- Architect / Designer
- 大城禎人/大城禎人建築設計事務所
独立をきっかけに生まれた家族の家
沖縄本島中部の新興住宅街にあるシンプルなコンクリート4層の建物。ここは建築家の大城禎人さんが妻と3歳の息子のほか、ご両親と弟さんが一緒に暮らしている3世帯住宅です。
「父は隣町で自宅と事務所が一緒になった家で水道屋を営んでいたんです。いずれは家と職場を分けたいと考えていたようで、この土地を20年以上前に購入。でも、その後に自宅を新築するきっかけがないまま、ずっと土地だけを持ち続けていました」


成人してから一度沖縄を離れ、東京の建築事務所に勤めていたという大城さん。キャリアを重ね、そろそろ建築家として独り立ちを考え始めたとき、手始めに家族のための家を建てようと考えたそうです。
「そのとき僕はまだ独身で、東京と沖縄で2拠点生活をするつもりでいました。ですから当初は一人暮らしの仮住まい+両親の住居と考えていたんですが、計画しているうちに妻と出会い結婚。彼女が僕の大家族での暮らしを望んだこともあり、結果として両親に弟も加わり、全員がひとつ屋根の下に暮らすことになりました」

沖縄に根付く人と人の強いつながり
妻の奈津子さんは、どんな気持ちから大城さん一家との同居を希望したのでしょう。
「私の実家は茨城のニュータウンにあって、典型的な核家族の家庭で育ちました。地域には伝統的な風習も祭事もなく、近隣の人たちとの関係も希薄なことに、どことなく物足りなさを感じていたのでしょうね。大家族の暮らしや近所との寄り合いにずっと憧れを抱いていました」
人懐っこい奈津子さんの性格も功を奏し、ご両親との関係は円満そのもの。沖縄では毎年春先になると、ご馳走を持ち寄って家族、親戚一同が先祖の墓前に集まり、賑やかに会食する“シーミー”(正式名称:清明祭/しーみんさい)という行事がありますが、奈津子さんにとってはお祭りのような感覚だとか。
「子供の世話や炊事なども両親に頼り切りなので、じいじとばぁばがいないと私は何もできません。なんて、ちょっと甘えすぎでしょうかね」

照れながら話す奈津子さんの横で、嬉しそうに笑うお母さん。知人からは新婚早々に夫家族と同居することを危惧する声もあったと言いますが、仲睦まじい大城さん一家の様子を見る限り、その心配は全くなさそうです。

自由なレイアウトを可能にする構造
こうした家族の絶妙な関係性を巧みにサポートしているのが、大城さんの設計プランです。コンクリートボックスを縦に積み上げたシンプルな構造体のように見せつつも、可能な限り内部を広々と、そして自由に使いこなせるアイデアに満ちています。
400mm角という細めの柱で緩やかに空間を分けながら、同じ400mm角の梁を逆梁(床面から梁を出すこと)で仕上げ、空間をできるだけ開放的になるように考えました」
400mmを基準にしたことで、建物を「400」と名付けた大城さん。この発想により、2階(大城さん夫妻)、3階(ご両親)、4階(弟さん)の3つの住居にはレイアウトの自由度が生まれ、家族構成や暮らし方に応じてそれぞれの居室が個性豊かなものに仕上がっています。



さらに柱間の壁は自由に抜き差しできるようになっており、家族の成長や暮らしの変化に合わせ、完成後にもさらに変化を遂げたと大城さんは言います。
「2階は店舗として貸し出すことも想定していたため、住居と完全に分離した構成にしていました。その後、結婚し、子供が生まれ、僕たち家族の自宅と職場を2階に設定したのですが、居間と事務所が壁で仕切られていたため、隣で子供が泣いてもすぐにあやしに行くことができません。そのため、隔てていた壁を取り除き、代わりに妻が琉球紙でつくった扉を設置。簡単に行き来できるように変更しました」

300年の伝統を誇る琉球紙を自ら漉き、現代の暮らしに見合うプロダクトや空間施工に生かしている奈津子さんの手しごとが絶妙に建築と融合している様子も、家族の一体感を表しているようにさえ感じられます。
一つの食卓に全員が集まる理由
家族仲は円満なものの、仕事で外出が続く大城さんと弟さん、別の場所にアトリエを持つ奈津子さん、友だち付き合いの多いお父さんと、それぞれの生活パターンはバラバラ。しかしながら、1階のピロティに設けた駐車場のおかげで、大城さん一家は互い行動をきちんと把握できていると話します。


「沖縄は車社会なので、自宅の駐車スペースが絶対に必要です。ですから、この家でもピロティの柱のスパンを細かく計算し、最大8台が駐車できるように。我が家だけですでに6台の車がありますから、効率よく駐車するために、誰が何時に帰ってくるかを毎日報告し合っているんですよ」

「息子が保育園から帰ってくると、真っ先に向かうのはじぃじとばぁばの部屋。弟も帰ってくると両親のところに降りてきて、息子と一緒に遊んでくれます。各階にキッチンは備わっているんですが、僕たちと弟の居室をサンドウィッチ状に挟んでいるため、自然と皆が3階の食卓に集合。一緒にご飯を食べるのが習慣になってきてますね」


大城家のキッチンカウンターは建築との相性や造作のしやすさから、コンクリートの研ぎ出しに。そこに組み入れたのがリンナイのガスドロップインコンロです。
「マットな光沢とシャープなデザインのコンロは、コンクリートとのカウンターと美しく調和しますからね。五徳を外せば簡単に掃除ができるのも良いですね」
夕飯の支度はお母さんに頼りつつ、奈津子さんも2階のキッチンで調理したものを3階に持って上がり、全員が一つの食卓を囲み団欒のひとときを楽しむ。
家のなかで育まれる家族の絆
3世帯6人が集う食事の時間は笑いが絶えませんが、大家族の暮らしは家事の手間も増えます。まだ幼い普くんは着替えも多く、毎日の洗濯量は相当なもの。そんな大城家の強い味方が、リンナイの衣類乾燥機〈乾太くん〉です。
「洗濯物を干したり、畳んだりするのが苦手な僕にとって、作業時間を一気に短縮してくれる乾太くんは夢のような装置です。東京の建築事務所に勤めていたときから、担当する物件には積極的に導入していました。ですから、自宅を建てるなら絶対に乾太くんを採用しようと最初から決めていました」
湿気が高く塩害も多い沖縄の暮らしには乾太くんが必要不可欠と、乾太くんは2、3、4階の各階に計3台設置。家族全員が納得して使っているそうです。

大城家のメンバーで唯一禎人さんのお兄さんだけは別の家に暮らしていますが、毎週土曜日には必ず来訪。恒例のイベントが行われるといいます。
「兄は元プロキックボクサーで、現在はスポーツトレーナーをしています。なので、兄がやってくる家族全員がトレーニングウェアに着替えて、両親の部屋に集合。それぞれの体のコンディションに合わせた筋トレやストレッチを教えてもらっているんです」
大切に思う人たちのことを考えてつくられた家の存在が、家族の心と時間を一つに結ぶ。当たり前のことがとても新鮮で貴重だと改めて感じられる瞬間でした。






- 題名
- 400
- 所在地
- 沖縄県中頭郡
- 主用途
- 住宅
- 設計
- 大城禎人建築設計事務所
- 施工
- 株式会社屋島組
- 構造
- 鉄筋コンクリート造
- 階数
- 地上4階
- 建築面積
- 121.28㎡
- 延床面積
- 407.59㎡
- 設計期間
- 2018年1月〜2019年5月
- 工事期間
- 2019年6月〜2020年6月
- Rinnai使用機器
- ドロップインコンロ
ガス衣類乾燥機 乾太くん
1985年沖縄県生まれ。エー・アール・ジー、石井秀樹建築設計事務所を経て、2019年に独立。「400」にて、2022年沖縄建築賞 正賞受賞。



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