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10:00 17:00
Text: Hisashi Ikai
Photo: Yikin Hyo
Journal 003

ただのどかに時間を過ごす、
至高の贅沢。
軽井沢のセカンドライフハウス

余生を過ごす夫妻が、これからの人生を豊かに過ごすために軽井沢に建てた「セカンドライフハウス」には、暮らしの豊かさと家族の想いがたっぷりと詰まっていました。

Product
DELICIA
Architect / Designer
R.E.A.D. & Architect

これからの自分に適した環境。

カナダ出身の宣教師、アレキサンダー・クラフト・ショーが偶然立ち寄った地の豊かな自然と澄み切った空気に感銘を受け、避暑地として再訪するようになったのは1886年。これに端を発する軽井沢の歴史は、140年近い時を経て日本有数の高級別荘地へと成長しましたが、新しいホテルやショップが次々にオープンし、コロナ禍以降は来訪者、移住者ともに増加傾向にあると言われています。名古屋在住のAさんも、この地に魅了されてセカンドハウスを建てた一人でした。

「企業に就職して50年以上、ずっと住まいと職場を往復するような仕事中心の生活でしたから、定年を迎えたら大きな庭がある一軒家でゆったりとした余暇を過ごすことが夢だったんです」

当初は現在の住まいからアクセスの良い蓼科を候補として考えていたそうですが、傾斜地が多く飲食施設も十分ではないため、余生を過ごす夫妻には適さない環境。その点、軽井沢は土地が比較的平坦で、充実の食体験を提供するレストランやカフェがたくさんあるのは魅力でした。

「家の近くでワインを飲みながらおいしいご飯が食べられる場所はあるし、息を切らすこともなく緑のなかをゆっくりと散歩もできる。軽井沢ならそんな日々が過ごせるんだなと実感しました」

優しい光を導く、北向きの開口。

ロサンゼルスとロンドンに赴任したときは、一軒家に暮らしてとても快適だったのですが、どちらも借家で日本ではずっとマンション暮らし。自身で家を建てるのは初体験というAさんに強力な助っ人が現れます。R.E.A.D. & Architects の岡田一樹さんです。

敷地の南側を背の高いモミの木と緑豊かな木立が囲み、北側の空には浅間山や矢ヶ崎山などの美しい山並みが広がっています。この雄大な景色と施主が夢見た四季折々の花が咲き誇る美しい庭を融合させたい。岡田さんは細長い敷地のかたちに沿うように2つの棟を少しずらして配置。それらを回廊で連結しながら、変化に富んだ開口を確保し、居場所に応じて窓が切り取る景色がさまざまに変化するようなプランを考えました。  

「リビング&ダイニングには南北に大きな窓があるんですが、暖かくなって両側を開け放つと、心地よい風がすっと部屋のなかを通り抜けるんです。北側から差し込むソフトな光は目に優しくて大好き。植え込みが茂るとちょうど目隠し代わりになってくれるので、レースカーテンも必要ないんですよ」

Aさんは「設計はプロに一任」と細かな要望を出さなかったそうですが、「私たちの感覚を塩梅よく汲み取ってくれたのは、やっぱり互いをよく知る家族だからでしょうかね」と夫妻で顔を見つめ合っては微笑みます。

使い勝手を優先したしつらえの工夫。

旅先で巡り合ったアートをさりげなく飾った室内は、インテリアデザイナーの娘さんのおかげで、どこを切り取っても絵になるスタイリッシュな空間になっていま、その見た目以上にAさんたちが気に入っているのが、住まい手の目線に立ち実用性を重視した控えめなしつらえだとか。

「空調や家電、照明などの設備は可能な限り目立たないように造作のなかにうまく収めつつ、キッチンの背後に大きなパントリーを設けたり、リビングカウンターの内部に書架を組み込んでいるので見た目はすっきりとまとまっています。でも、必要なときにはすっと手が伸ばせる位置にモノが置けるので、使い勝手がとても良いんです」

軽井沢の大きな空の下だけでなく、広々とした居住空間さえも二人にとっては格好の散策コースになっており、窓の外に広がる緑や小鳥のさえずりを堪能しながら、穏やかに家のなかをウォーキングすることもあるとか。東京から娘家族が遊びに来ると、孫は縦横無尽に家のなかを走り、笑い声が絶えない賑やかな団欒の空間へと転じます。

「どこに行こうか、何をしようかと特別な予定を立てなくても、この家にいるだけで気持ちが緩み、心が満たされます。街中にも素敵なものはたくさんありますが、ただこの家で長閑な時間を過ごすことが、軽井沢にやってくる目的はなのかもしれませんね」

安心して思い通りの調理を楽しむ。

ワインが大好きだというお二人にとって、食事は最大のお楽しみ。ランチこそ外食も多いそうですが、大体は自宅のキッチンで調理を堪能していて、朝食はご主人がつくり、昼と夜は奥様が台所に立つのが基本だとか。このように自炊を好むのは、なにより軽井沢で手に入る地元食材が美味しいからとお二人は話します。

「軽井沢のスーパーは、地元民のみならず観光客にも知られる有名店で、鮮度の良い生鮮食品からプライベートブランドのジャムまで、品揃えがとても豊富で値段もお手頃なんです。ついつい買いすぎてしまうこともあります」

料理の腕を振るうのに活躍しているのが、リンナイのガスコンロ〈デリシア〉です。タイマー機能を使って直火調理を自在にコントロールできる機能に加え、過熱防止や消し忘れ、地震感知による消火など、高い安全基準が備わっているので、安心して調理に集中できるとのこと。

「今住んでいるマンションのコンロは15年以上使っている古いモデルですから使い勝手は良くありませんし、東京の住まいはIH仕様なのでパワー不足で火入れが物足りない。その点、軽井沢で使っているリンナイのガスコンロは火力がLED表示されるので見やすく、思い通りの調理を楽しむことができて大満足です」

暮らしと一体になる庭の風景。

がむしゃらに働いてきた人生にそろそろ区切りをつけて、ゆっくりと余生を過ごしたいと願うものの、仕事柄のため完全にリタイアするにはまだ数年かかりそう。いまでも名古屋の本邸と軽井沢のセカンドハウスを自身で車を運転して移動しているそうですが、その道中で思い浮かべるのは庭を彩る小さな花々のこと。

「僕は小さい頃から山登りが好きで、学生時代は登山部にも所属していましたから、高山植物を見るのが好きなんですよ。見つけるたびに苗を購入して、軽井沢の家の庭で大切に育てています」

広い庭にはイングリッシュガーデン風の花壇をもうけ、北側の道路との境界には石を積み上げたロックガーデンも造作。大きな樹木の枝切りこそ庭師さんに任せつつ、それ以外は夫婦揃って念入りに手入れしています。

「庭に出ていると、手に取るように日本の四季をきちんと味わうことができます。それに軽井沢の特徴的な気候のせいでしょうか。名古屋では2週間ほどで盛りを終えてしまう花が2ヶ月近く咲き続けることもあるんですよ」

春には庭で採取したフキノトウを食べ、冬には敷地に自生するモミの木に飾り付けをしてクリスマスツリーにする。豊かな周辺環境をじっくりと観察したうえで設計されたこの家が、日々の何気ない瞬間がとても尊く、豊かなものであることを気づかせてくれるのです。

1階
題名
軽井沢のセカンドライフハウス
所在地
長野県北佐久郡軽井沢町
主用途
住宅
設計
R.E.A.D & Architects 岡田一樹・岡田絢子
施工
建築工房 市川  市川邦一・市川優太
構造
鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
階数
地上1階
建築面積
264.93㎡
延床面積
227㎡
設計期間
2018年4月~2019年6月
工事期間
2019年7月~2020年7月
Rinnai使用機器
ガスコンロ DELICIA RHS72W22E4V2D-STW
Architect / Designer
R.E.A.D. & Architects

建築家・岡田一樹が主宰する、東京の建築設計・デザイン事務所 R.E.A.D. & Architects。そこに存る人々や場所などの関係性(Relationship)、与えられた環境(Environment)を読み解き(R.E.A.D.)、建築(Architeture)の設計(Design)を通して、新しい関係性やより良い環境を生み出します。

R.E.A.D. & Architects
Web: https://read-arch.co.jp/
Instagram: https://www.instagram.com/r.e.a.d._architects/