Photo: Yikin Hyo
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光と風が舞い
家族をやさしく包み込む
八雲の家
望んだのは、家族5人が健やかに過ごす場所。独創的な屋根の形と細やかな空間設計が自然と呼応し、落ち着きと幸せに満ちた時間が流れる「八雲の家」を訪ねました。
- Product
- 乾太くん
- Architect / Designer
- 小大建築設計事務所+磯田和明
望んだのは、家族5人が健やかに過ごす場所。
独創的な屋根の形と細やかな空間設計が自然と呼応し、落ち着きと幸せに満ちた時間が流れる「八雲の家」を訪ねました。

桜並木が連なる緑道に面した南東の角地に立つ「八雲の家」。都心の住宅街ながら、その好立地のおかげで家のどこにいても明るい日が差し込み、心地よい風が頬にそよぎます。施主のOさんがこの家を建てるきっかけとなったのは、ちょうど3人目のお子さんの誕生を迎えたときのことでした。
「当時住んでいたマンションは5人家族が暮らすには少し手狭でした。なによりも僕は、小さな子どもたちが気兼ねなく駆け巡る姿をゆったりと眺められる場所がほしかった。だからこの土地を見つけたときには、環境のポテンシャルを存分に引き出し、とにかく広い空間をつくってほしいと設計の方にお願いしました」

Oさんの要望を叶えるべく、設計者の小大建築設計事務所がまず注目したのが屋根の構造でした。“シザース・トラス”と呼ばれるハサミを大きく開いたときのような形に天井梁を組むことで、柱や壁をまったく必要としない強固な構造を実現し、広さ50㎡の開放的なリビング&ダイニングを完成させたのです。

敷地を存分に活用し1、2階を合わせ265.02㎡の床面積という広々としたスペースを確保したものの、あくまでも普遍的な日常の時間を過ごす場所であり、主張の強い建物にはしたくないというのもお施主さんの希望でした。ボリュームを維持したまま、閑静な街並みに馴染む穏やかな佇まいを実現するにはどうしたらよいか。これを解決するために、設計者は北側の屋根を一段低く設定することを提案。屋根の傾斜がなだらかにすることで圧迫感が軽減し、落ち着いた外観にまとめることができました。
さらに、この屋根のかたちは採光と通風にもプラスアルファの効果を発揮。段違い屋根の隙間に設けた小窓から心地よい光と風がリビングに舞い込んでくるのです。

この空間にいると
最高に気持ちいいんです。
「この空間にいると、時間とともに外光がうつろう様子を一日中感じることができて、最高に気持ちいいんです。眠るとき以外のほとんどの時間をこのリビングで過ごしているような気がします」


新居を構えるにあたり生活家電も一新。特にこだわったのは洗濯の効率をアップさせるための機器選びでした。
「3人の子育ては日々が洗濯物との闘い。最低でも1日3回は洗濯機を回す必要があります。以前住んでいたマンションでは洗濯乾燥機を使っていたのですが、いつも乾燥が十分でなく、ベランダでの外干しと浴室乾燥を同時進行。湿った洗濯物を抱えて、昼夜問わず家のなかを行ったり来たりするのがストレスでした」
新居を構えるにあたり、家を建てた経験のある知人・友人におすすめの乾燥機を聞いたところ、ほぼ全員にガス衣類乾燥機「乾太くん」の導入を勧められたといいます。
「センター湿り具合をチェックしてくれるので、衣類はもとより、大きなベッドシーツを複数枚入れても、完璧に乾かしてくれますからね。いまではもう、乾太くんなしの生活は考えられないですね」
洗濯・乾燥のストレス軽減を、設計面でもしっかりサポートしているのもこの家の素敵なところ。洗濯機から乾燥機への洗濯物の移動をスムーズにするため、作り付けの家具で扉の高さが水平になるように造作家具のバランスを絶妙に調整しているのです。さらに、隣り合うベランダへのアクセスとなる段差はベンチ代わりになるほど広めにデザインして、その下を引き出し式収納スペースに。これにより、乾燥が終わったら脇に座って洗濯物を畳み、そのまま引き出しに整理することができるようになったとのこと。以前は時間と手間がかかっていた洗濯~乾燥~収納までの一連の作業が、最小限で済むいくつもの仕組みがこの空間には隠されているのです。

乾太くんのおかげで
毎日洗濯が楽しみになりました。
「おかげで毎日洗濯が楽しみになりましたし、生活のリズムも整ってきたような気がします」
洗濯&乾燥にかかる時間が減った分、子どもたちとゆっくり夕食を取り、一緒に風呂に入って夜9時頃にはベッドに入るという健康的なサイクルが日課になっているとのこと。「洗濯はほとんど僕が担当しています」というご主人も、趣味のランニングやサーフィンに気兼ねなく出かける余裕ができたと満面の笑みを浮かべます。

家族と共有する時間はとても貴重ですが、子どもの成長を考えるとそれぞれのプライバシーがきちんと守られるセッティングも用意しておく必要があります。この家では、4つのベッドルームを設けて一人ひとりの居場所を確保していますが、あまりにも細かく居室を分けてしまうとせっかくの豊かな環境を台無しにしてしまう可能性も。そこで効果的な役割を果たしているのが、中2階の存在です。

スキップフロアが家族同士をそこはかとなく意識するポイントとなるとともに、上下階を緩やかに繋いで自然に風を送る中継点にもなっています。また、夏場は天窓から熱気を逃し、冬になると建物頂部の暖気を一階の窓下や浴室へと送り込むパッシブデザインの仕組みも積極的に採用し、家全体で空気が対流するようにしたのもポイントでしょう。

「住み始めてちょうど一年が経過。春、夏、秋、冬とすべての季節を経験したのですが、暑さ寒さを感じることもなく、とにかく気持ちがいいという快適な時間を過ごしています」

同じように繰り返される毎日も,
それぞれに違う特別な1日。
朝日とともに目覚め、通りをそよぐ風を体に感じ、床に映り込む陰に太陽の巡りを眺め、夕暮れとともに家族の団欒が始まる。同じように繰り返される毎日も感覚をそばだててじっくり観察してみると、それぞれに違う特別な1日。住まいと家族と環境が一つに溶け合う八雲の家は、日々の小さな変化と成長に喜びを感じられる場所なのかもしれません。



- 題名
- 八雲の家
- 所在地
- 東京都目黒区
- 主用途
- 住宅
- 設計
- 小大建築設計事務所 + 磯田和明
- 施工
- 株式会社渡辺富工務店
- 構造
- RC造,木造,一部鉄骨造
- 階数
- 地上2階
- 建築面積
- 135㎡
- 延床面積
- 265㎡
- 設計期間
- 2022年3月~2023年3月
- 工事期間
- 2023年4月~2024年2月
- Rinnnai使用機器
- 衣類乾燥機 乾太くん RDT-93 (22-4445)
小嶋伸也(1981年神奈川県生まれ)と小嶋綾香(1986年京都府生まれ)が主宰する建築設計事務所。ともに隈研吾建築都市設計事務所を経て、2015年に独立。表層的になった現代の人間関係や地域性の再生、職人技術や地域の美しさの継承を目指す。“1000年後も日本人の感性と住まう豊かさを”をテーマにしたリノベーションブランド「一畳十間」も運営している。
小大建築設計事務所
Web: https://ko-oo.jp
Instagram: https://www.instagram.com/koooarchitects/
一畳十間
Web: https://ichijo-toma.jp/
Instagram: https://www.instagram.com/ichijo_toma/


