Photo: Shuhei Tonami
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集いと憩いの舞台装置が生むそれぞれの自由な居場所。 軽井沢の家
豊かな自然に包まれ、都心からのアクセスも良い軽井沢。施主の思い出がたっぷり詰まったこの地に新たにつくった家族と仲間たちのための場所には、それぞれが自由な過ごし方を促すたくさんの工夫が施されていました。
- Product
- 乾太くん
- Architect / Designer
- nao architects office + Studio Hashimura
北面から溢れる柔らかな光。
「住まいは東京ですが、子供の頃から事あるごとにずっと訪れていたのが軽井沢でした。ですから、私の両親、私、子供、孫と4世代にわたってお付き合いのある方々もたくさんいます。そんな人々と気軽に集まれる場所がほしくて」
定年を迎えたご主人とともに余暇をゆったり過ごすとともに、家族や仲間たちがふらりと立ち寄れるような家を、親しみのある軽井沢につくりたい。そう考えた施主は、建築家の内田奈緒さんと橋村雄一さんに相談を持ちかけました。
「たっぷりとした間口のあるおよそ300坪ある広い土地だったこともあり、建屋は幅18.6mと余裕もたせながら、軽井沢の風景に沿うようにファサードは簡素な仕上げに。その代わりに奥行きを6.8mに抑えつつ、敷地北側に建物を寄せて南側にゆったりとした庭を設けました」


敷地の目の前を側道が走るため、プライバシーを守るためにも一階部分は板壁で覆った代わりに、2階に大きく窓を開いて北面からの柔らかな光が住居のなかに注ぎ込むように採光の工夫が重ねられています。
舞台としても活用できるホール。
シンプルな外観とは裏腹に、前庭から伸びる階段を上がり、玄関の扉を開けると、無垢板の床面がホールからそのまま庭へと延びる大胆で伸びやかな空間が現れます。
「このホールは特別な機能や役割を持たないもので、住居としては少し無駄な空間のように思えるかもしれません。でも、この家には家族以外にも知人や友人が大勢が集まる機会も多いことから、訪れてゆっくりとひと息ついたり、それぞれが自分の好きなところにいられる余地があると良いと思ったんです」

多いときには20名以上が集まり、友人の音楽家によるコンサートや能楽師を招いて演目を披露してもらうことも。
「舞台としての役割だけでなく、ここを訪れた人々が集い、憩う。その様子が互いにとって心地よいものとなるような環境を、このホールのなかに作り出すことをイメージしながら設計しました」
ホール右手にはやわらかな曲面を描く開口が設けられており、その先には天井まで吹き抜けになった開放的なリビング&ダイニングが広がります。片隅に設けられたオープンキッチンも、施主が来客と談笑しながら調理ができるようにと考えられたものだとか。
そして、キッチンの背後の壁には準備や配膳が捗るように、適切な高さのカウンターを設けるとともに、美しい色をまとったガラス器を飾る棚や小窓から遠くに臨む浅間山が、空間に彩りを与えています。

窓から浅間山を仰ぎ見る。

子供の家族や友人が宿泊することもあることから、ベッドルームは1階と2階に一つずつ用意。主寝室として使われる1階の部屋は、平面・断面ともに正方形に近い形とすることで天井が高く感じられ、圧迫感のない空間になっています。一方で、らせん階段を上がった先にある2階のベッドルームは、勾配天井にしたことで窓の外に軽井沢の風景と遠くに浅間山を眺める景観がより際立って見えるのも特徴でしょう。


さらに、寝室の脇には一段上がったところから赤いじゅうたん張りの床が大きな弧を描きながら1階のリビング上方へと続いていきます。
「ここもホール同様に、生活に必要ではない抽象的な空間なのですが、床の奥行きや建物の広さを感じられるとともに、空間の輪郭を強調してくれていると思います」
2階寝室から敷き詰められた赤いじゅうたんの輪郭を辿ると、らせん階段や天窓の円形モチーフと床のアウトラインがリンクしながら、自由で朗らかなこの家の表情を一層印象的に見せています。


光を映しとる曲面。
この家を共同で手がけた建築家の内田奈緒さんと橋村雄一さんは、プランニングにおいて、特に素材の選定やディーテルについては検討を繰り返したとそのプロセスを振り返ります。なかでも最後まで悩み抜いたのが、1階のリビング&ダイニングの半分を覆う曲面の壁だったとのこと。
「矩形の箱のなかに大きく弧を描きながら回り込む壁は、ボリュームも大きく、空間全体に強い印象を与えます。この壁は一定の存在感を必要としながらも、テクスチュアを派手にしすぎると、住宅としては落ち着かない環境になってしまう。ですから、当初はすっきりとした突板にしようとか、白く仕上げてシンプルにまとめるというアイデアもありました。結果的に羽目板に薄くシルバー塗装を施しています」
木目がほのかに透けて見える壁は、外光を受けて軽やかに輝きながら刻々と変化。まるで印象派の絵画のように光と色の粒が混じり合い、時間帯や季節によって室内にさまざまな情景を作り出していきます。

こだわり抜いたディテール。
さらに細部を注意深く見ていくと、建築家のディテールへのこだわりが次々に明らかになっていきます。ホールからリビングへとつながるオーク材のフローリングには鋸挽き加工で細かな凹凸を施し、素足で触れたときの感触を心地良くするとともに、波打つような陰影が空間に小気味良いリズムを与えます。また、鉄骨製の階段は踏板一枚一枚に木板を張り、シャープな印象を和らげると同時に、寒い冬でも足元を暖かくキープ。特にバスルームはメーカーに直接依頼をかけオリジナルで作った黄色いタイルを一面に貼り、遊び心をもたせた独自の空間に仕上げ、いつでも快適なバスタイムが楽しめるように自動湯張り機能を備えたリンナイのガス給湯器を導入しました。

バスルームから出たところで、壁の凹みにすっぽりと収まる形で設置されている乾太くんを発見。軽井沢は湿気が多いので洗濯物は乾きにくい上に、別荘で過ごす時間は限られているので、いざ帰ろうと思ったときに家の片付けをさっと済ませたい。以前に暮らしていた家でも乾太くんを使っていたこともあり、その機能性には絶大な信頼を寄せていたが、デザイン性が高く、容量もあり、手入れも簡単な新型乾太くんをさらに高評価。
短時間でふわりと仕上がるので、もろもろ準備しているうちに乾燥が終わり、とても重宝していると施主は頬を緩ませます。

刻まれる新たな記憶。

建築家の父を持ち、過去には吉村順三が設計を手がけた別荘で時を過ごしたこともあるという施主。建築への造詣が深い彼女の目にこの新しい軽井沢の家はどのように映っているか気になるところ。
「ほぼ全面的にお任せしたので、どうなるのかしらと当初は思っていましたが、リビングにいると上から降り注ぐ光が心地よいし、キッチンに立てば庭の緑も目に優しい。友人たちも気ままに訪れてくれて、子どもたちはらせん階段を上り下りしながら、家のなかを走り回って遊んでいる。この家でなければ、こんな素敵な時間は得られなかったでしょうね。やっぱり建築って楽しいなと思っています」
大勢を招いてホームパーティをしたときの写真を見返すと、ダイニングで料理に舌鼓を打つ人、ホールでカードゲームに熱中している人、庭に突き出したデッキに寝そべっている人など、家の至るところで人々がそれぞれに自由な時を過ごしている様子が伺えます。
ヴィンテージの名作家具やアート作品が置かれているものの、完成から間もないこともあり今はまだ生活感がなく、少し殺風景かもしれないと話す。
「今年の夏は、もっと頻繁にこの家に来て過ごす時間も増えそう。またいろんな人々にいらしていただき、たくさんの楽しい思い出がつくれると嬉しいですね」
独立して、別々に暮らすようになった子どもや孫とこの家で憩い、普段は異なる地域に暮らす友人も、避暑を求めて軽井沢にやってくるたびにこの家に集う。施主にとっては幼い頃から頻繁に訪れ、すっかり慣れ親しんだ軽井沢ですが、この家が完成したことで、再び新たな時間が生まれ、さらなる記憶を重ねていくのでしょう。



- 題名
- 軽井沢の家
- 所在地
- 長野県軽井沢市
- 主用途
- 住宅
- 設計
- nao architects office+ Studio Hashimura
- 施工
- 丸山工務店
- 構造
- 木造、地上2階
- 階数
- 地上2階
- 敷地面積
- 946.32m2
- 建築面積
- 135.47m2
- 延床面積
- 178.12m2
- 設計期間
- 2022年1月~2023年9月
- 工事期間
- 2023年10月~2025年1月
- Rinnai使用機器
- ガス衣類乾燥機 乾太くん
東京都生まれ。日本デザインセンターに勤務後、スイス連邦工科大学チューリッヒ校へ留学。2016年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了。デザインオフィスnendoを経て、nao architects officeを設立する。日瑞建築文化協会理事。
大阪府生まれ。2008年多摩美術大学美術学部環境デザイン学科卒業後、渡英し、University of East London Dip.Archに学ぶ。Tony Fretton Architects、Carmody Groarke、年新素材研究所を経て、15年Sawada Hashimuraを共同設立。23年Studio Hashimuraに改組する。




